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2019年の保守サービス終了に向けて Power Systems市場が動く

Power Systemsの保守サービス終了の知らせは、IBM i市場を驚かせた。
POWER5、POWER6のみならず、2010〜2013年に販売された比較的新しい
POWER7プロセッサ搭載モデルも、2019年に保守が終了する。
このニュースに、IBM iユーザーやビジネスパートナーが慌ただしく動いている。

 

●写真 徳田幸一氏  JBCC株式会社 プラットフォーム・ソリューション事業部

POWER7搭載モデルの保守が
2019年に終了へ

昨年9月19日にIBMが発表したPower Systemsの保守サービス終了に関するニュースは、IBM iユーザーやビジネスパートナーを大いに驚かせた。対象製品にPOWER5などのヴィンテージ製品のみならず、POWER6、さらにはPOWER7プロセッサ搭載モデルが含まれていたからだ。

IBMが発表した保守サービス終了の対象製品は、図表1のとおりである。

 

これにあるように、POWER5以前の搭載モデルは、当初2020年もしくは2021年の保守停止が通知されていたが、それを1~2年前倒しし、2019年3月31日に保守を終了することが新たに発表された。同様にPOWER6搭載モデルは2019年3月31日、POWER7搭載モデルはそこから半年遅れの2019年9月30日に保守を終了する(POWER7+搭載モデルは含まれておらず、これに関する保守終了予定は今のところ発表されていない)。

ここ数年、ビッグデータやIoTの登場で、データ量はメーカーの予想を大きく超えて爆発的に増大している。そこでPOWER8以降の最新プロセッサにより処理能力を高めたPower Systemsへの移行を加速し、従来の基幹システムの枠を超えた多様なニーズに対応可能にする、というのがIBMの方針のようだ。

IBMは2007年にPOWER6、2008年にPOWER6+、2010年にPOWER7、2012年にPOWER7+の各プロセッサをリリースしてきた。今までの例を見る限り、POWER搭載製品の保守サービスは、少なくとも15年程度は続いてきた。その方程式に従えば、POWER7搭載モデルは少なくとも2025年ぐらいまで保守サービスを受けられると、ユーザーは期待していただろう。

ところが、2010~2013年に販売されたPOWER7搭載モデルも2019年9月で保守を終了するので、それまでに新しいハードウェアにリプレースしなければならない。これはオープン系サーバーの世界では一般的な保守サイクルであり、驚くには当たらない。Power Systemsも「世間の常識」に近づいてきたと言えなくもないが、資産継承性の高いIBM iと同様、「長く使える」ことがPower Systemsの魅力であると感じていたユーザーにとっては、予想外の事態である。日本に限らず世界中のユーザーが、この発表に驚いたのも無理はないだろう。

 

POWER8やPOWER9への
リプレースに向けた動き

Power Systemsを販売するビジネスパートナーは発表を受け、対象ユーザーへ保守サービス終了を伝えるとともに、今後に向けたリプレース提案を活発化させている。

ユーザーの反応はさまざまだ。長く使えると期待してメインフレームから移行したケース、あるいは新規モデル導入を機に、旧マシンをバックアップ機にして二重化体制を構築したケースなどいろいろで、いずれも保守終了の知らせに戸惑いを隠さない。その一方、否応ないデッドラインを免罪符に経営側の承認を得て、喜々として最新の環境構築に乗り出すシステム部門もある。

ただし多くのユーザーでは、「時間不足」という切実な問題に直面している。2017年9月の発表から保守終了まで、最短で1年半。3月末に決算期を迎える多くの企業では、もし2019年春の新規導入を目指すなら、2018年3月末までに予算化する必要がある。リプレースには前向きであるものの、「間に合わない」と判断し、保守延長に踏み切るケースも少なくないようだ。ちなみに保守延長は1年単位の申請ベースで、メーカー側は該当製品の部品在庫などに照らし合わせて延長可能かどうかを回答する。

戸惑いや期待など、ユーザーのさまざまな思いをはらみつつ、Power Systems市場にとってこの保守終了は、大きな「追い風」となっていることは間違いない。発表されて以降、Power Systemsの販売は近年にない伸びを見せている。

IBM iおよびPower Systemsの導入で業界トップの実績を誇るJBCCでは発表後すぐに、営業担当者が対象となる各ユーザーを訪問し、保守終了を知らせるとともに、今後へ向けたさまざまな提案を進めている。

JBCCでは次の3つの提案を軸にしている。1つ目は、POWER8搭載モデルへのリプレース。単純なハードウェアリプレースにとどまらず、アナリティクスやBCPなど、これからのシステム構想を見据えた付加価値提案を重視している。2つ目は、脱RPG路線によるオープン系への移行。これまでの資産を活かし、超高速開発ツール「XupperⅡ」や「GeneXus」で構築したJavaアプリケーションをオープン系サーバーで運用する。そして3つ目は、IBM i資産をIaaS型のクラウドサービスへ移行・運用すること。つまり保守サービス期間に依存しない、オンプレミス環境からの脱却である。

「JBCCの強みはこれら3つの提案をベースに、IBM iからオープン系まで、お客様の意思決定を全方位でサポートできる点にあると考えています」と語るPower Systems担当の徳田幸一氏(JBCC プラットフォーム・ソリューション事業部 ソリューション技術部 次世代仮想化G)によれば、今回の対象ユーザーの約半数が、すでにPOWER8搭載モデルへのリプレースを前向きに検討中、もしくは合意済み(導入決定)であるという。

また約10%に相当するユーザーが保守延長を決定した。そのほか複数台導入していたマシンを統合する、すでに新しいマシンに移行済みだが、保守契約を締結してデータ参照用に残していた旧マシンの利用を停止する、オープン系へ移行するなど、何らかの「利用停止」を決断したユーザーも見られる。

2017年1月の取材時点では、決算期が3月以外であるなどの理由で、まだ結論を出していないケースも多く、今後さらに方向性が決定していくことになるだろう。

「2019年に2度予定されている保守終了のタイミングに向け、リプレース作業が集中すると予想しています。導入を担当する技術者不足などでお客様にご迷惑をおかけしないよう、スケジュール策定を含めて万全の体制で臨むつもりですが、お客様にも早めの検討をぜひお勧めしたく思います」(徳田氏)

誕生から、今年で30周年を迎えるIBM i。まもなくPOWER9も発表される。ユーザーの判断が急がれることになる。

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